恋に落ちたコペルニクス             目次に戻る


 西暦14X X 年。コペルニクスは、天空を運行する惑星の挙動を不審に思っていた。それは「聖書」に述べられる天動説ではどうしても説明が付かない謎であった。
 やがて彼は、「自分も太陽の周りを回っているのだ」(地動説)
と気付いた時、あの惑星の運行が見事に説明できたのだった。自分が動いているから、あの惑星の運行が複雑に見えるのだ。つまり、対象を理解しようとする時、観察する自分の立場を考慮すると、視点が180度転回して、天地がひっくり返るような大発見をするということなのだ。これを後にカントが「コペルニクス的転回」と呼んだ。
 さて、若き日のコペルニクスは、教会の司祭であり医者でもあった。ある日、彼は教会の中庭で一人の若き修道女と巡り逢った。途端に彼は、彼女の一挙手一動に目を奪われて、胸が高鳴った。その魅惑的な挙動は神学や医学ではどうしても説明が付かない謎であった。
 やがて彼は、
「私は恋に落ちたのだ。恋に落ちた私の心が動いているのだ」
と気付いた時、彼女の魅惑的な挙動が見事に説明できたのだった。もし自分が恋
に落ちた青年でなかったら、あの修道女はもっと別のものだったのだ。この体験は後に「コペルニクス的転回」と呼ばれる大発見の礎となったのである。(作者註:第3段落から後は作者の作り話です。敬虔な司祭であるコペルニクスに対して失礼な作り話をして申し訳ありません)

     青森県医師会報 平成24年8月 584号 掲載


 目次に戻る